と二人・・・大きなイルカの形をした浮き輪を抱えて
焼けた砂浜の上を・・・海へと歩いた

ふと・・・、の足元を見ると
真っ白だった肌が・・・、日差しに焦がされて
サンダルの跡がついていた・・・
水着に合わせたペディキュアの・・・ピンクが
のつま先を・・・、可愛らしく彩っている・・・
普段見ることの出来ない・・・水着姿と合わさって
尚更・・・俺の心は・・・ざわめいた


「砂浜が熱いから水の中は気持ち良いね!」

俺たちは・・・、の足が付くか付かないか
そんなギリギリのところで・・・・二人で浮き輪につかまりながら・・・
波の動きにあわせて・・・揺らいでいる


「ねえ葉月くん、海好き?」
「・・ん?・・・ああ」
「良かった、私も好きなの」
「・・・・ん」
「私ね、こう見えても、結構泳ぐことは自信があるんだよ」
「・・・ああ」

「でね、奈津実ちゃんが、みんなでどっか遊びに行こうって誘ってくれたから
すぐに「海がいい!」って返事しちゃった」
「・・・・ん」
「だけど、あとから葉月くんも来てくれるって知ったの」
「そうだったのか・・・」
「だから、葉月くんがもし海が嫌だったら・・・どうしようって」
「・・・・・」

『俺は・・・・おまえと一緒なら・・・どこだって嬉しい』

そう・・・言いたかった・・・でも
俺の口から出る台詞は・・・・そんなに親切じゃ無い


「別に・・・海で構わない・・・夏だし」
「うん、そう言ってもらえれば、安心」

そう言って、文字通り太陽みたいに眩しい笑顔を俺に向ける・・・
俺は・・・、口下手な自分を恨んだ
姫条みたいに・・・、言いたい事を何でも言えたなら・・・
鈴鹿みたいに・・・、憎まれ口言いながらも強引に行動できたなら・・・

そんなことを考えるけれど・・・俺は、ろくな返事すら出来ない
いつも「・・ん」とか「で・・?」とか
面白くも無い返答をしてしまう
それでも・・・、は嫌がりもせず・・・俺の話を聞いてくれる
だからこそ・・・、俺は・・・を好き・・・なんだ・・と思う

こんなことを考えながら・・・、波に任せて揺らいでいた俺たちは
いつのまにか、浜からかなり離れていた
大きな波がくると、もう俺の足も底に届かない場所だった

「・・・、ちょっと、沖へ来過ぎた・・・戻るぞ」
「あ、本当だ、葉月くんのことばっかり見てたから全然気付かなかった」
「・・・え?」
「じゃ、私気合で泳ぐから、イルカちゃんよろしくね」
「おい、ちょっと、待てよ」

俺が言うよりも早く、は浮き輪から離れて、浜へと泳ぎ始めた
綺麗なフォームで、規則的に浮き沈みするの後ろに俺も続いた・・・
ところが、30m程進んだところで、急にの頭が浮かんでこなくなった

「えっ?!!!」

焦った俺は、慌てての元へ泳いだ

!どうした?!」
「た、助けて!足が・・・!痛い!!」

急に激しく身体を動かしたせいで、足がつってしまったは、バタバタと手を動かしてもがいている
の身長では、まだ海底の砂に足が届かない

!俺につかまれ!」
「やっ、溺れちゃう、怖いっ、助けて、珪くん!!!」
「慌てなくていい!!俺が支えるからつかまれ!」
「け、珪くんも溺れちゃうよ!!あっ!」

足がつった事でパニックになったには
言葉で言っても、どうにもならない

!俺の足は付いてるから大丈夫だ!」

俺はを抱きしめて抱えあげた
は、何も言わずに俺の背中に腕を回ししがみついてきた
俺は、波の動きに注意しながら、ゆっくりと進む

波打ち際まで来て、砂の上にを座らせ、足の様子を見た

、平気か?まだ痛むのか?」
「うん、急だったからビックリしちゃって
ゴメンネ、珪くん、もう大丈夫」

そう聞いて、ほっと安堵した俺は

『珪くん』

の口から、俺の『名』を呼ばれたことに気付いた
いつもは『葉月くん』そう呼んでくれている・・・
同時に、俺ものことを『』と声を出して呼んでいる事に気付いた
もちろん、普段は『』そう読んでいる俺だけど・・・

砂に座り込んだままで、足をさすっているを見ながら
俺は、心の中で何度も
『珪くん』と繰り返す

その時、浜で様子を見ていたみんなが、近寄ってきた

「ちょっとー、アンタ達、何抱き合ってんのよ?もうもう見てるこっちが照れるじゃん!」
「ホンマやね〜、ええ雰囲気で、羨ましいわ、葉月も隅に置けんわな」

「あ・・・、いや・・これは」
「な、何言ってるの?!私の足がつっちゃって、溺れそうになっちゃったの!
で、葉月くんに助けてもらっただけだよ!もう、やだなー」

「え?ちゃん、足がつったの?」
「足がつっただと?準備運動もしねえで急に泳ぐからだぞ!
おい、紺野、マッサージしてやれ」
「うん、ちょっとみせて!」
「あ、珠美ちゃん、うん、右足がピキーンって」

紺野が座り込んでの右足を見始めた
のふくらはぎは、見た目にも解かるくらい不自然に盛り上がっていた
紺野は、丁寧にその硬くなった筋肉を揉み解してゆく

「もう、こんなに痙攣してたら痛い筈だよ、ここをほぐせば大丈夫だからね」
「うん、ありがとう、珠美ちゃん」

、平気?からかったりしてゴメン」
ちゃん、スマン」
「いいよ奈津実ちゃん姫条くん、気にしないで」

「もう大丈夫だね、ちゃん、立ってみてぇ」
紺野に言われ、は立ち上がり、右足を前後に振った

「うん、もう痛くない、ありがとう!珠美ちゃんの手は魔法の手だ!」
そう言って、は紺野に抱きついた

「そんなことないよぉ〜、このくらいの事」
紺野は照れて赤くなって、俺は、ここでようやく・・・ある事に気付いた

「あ・・・・」
「あん?何だよ葉月?」
「イルカ・・・・」
「あ〜〜っ!!イルカがいないっ!」

藤井の大事なイルカの浮き輪・・・
俺がを助けている間に・・・何処かへ泳いでいってしまったらしい

「・・・・藤井、ごめん」
「気にせんでええよ、葉月
ちゃんが大変やったんやから、イルカはええよな?」

「まどか・・・、ま、仕方ないか〜
イルカがいないなら、まどかにしがみついて泳ごうっと!」
「ええで〜〜、自分がしがみついてきたら、どさくさ紛れに触ってもええやろ?」
「何言ってんの!?このエロオヤジ!!」
「アホ!まだオヤジやないわ!
こんなにええ男つかまえてオヤジは無いやろ!」

姫条と藤井の漫才が始まって、俺とは顔を見合わせてクスクスと笑った

「本当、お似合いだよね、あの二人」
「ああ・・・」
小声でそう囁きあう

「ん?おっ!おい、イルカがいたぜ!」
「え〜?あ、本当だぁ」
「え?マジマジ?」

鈴鹿が海のほうを指差すと、誰も持っていないイルカがゆらゆらと波間で揺れていた

「おっしゃ〜、はば学ランブルフィッシュの俺様が取ってきてやんからよっ」
「あ・・、和馬くん」
鈴鹿はそう言うと、一目散に海へと駆け出して・・・紺野が心配そうにその後をおった

「それじゃ、俺らももう少し水遊びでも〜
自分が溺れそうになったら〜
助ける振りして、胸でもムニューっと!」
姫条がそう言って、藤井の胸元に手を伸ばすと、

「アタシの胸を触ろうなんて100年早い!」
そう言って、藤井がピシャリと姫条の手を叩いた
そして二人仲良く、笑いながら海へと走ってゆく


「葉月くんも、泳ぎに行っていいよ?」
「いや・・・、俺は・・・」
「私は、少し休むから」
「ん・・・、俺も・・・一緒に・・・いるから」



こうして、太陽が西へ傾いてくるまで・・・・
俺たち6人は、はばたき海岸での海水浴を楽しんだ

ここへ来た時よりも・・・どの顔も小麦色に焼けていた
真っ青だった空が、ほんのりと茜色を帯び始め
心地よい風が吹き抜ける

こうして・・・海へ来るのも・・・今年は最後かもしれない
俺たちはレジャーシートをたたんで・・・
身の回りのものを片付けて・・・帰路へ付く

そして、今日のメインイベント・・・
そう「The Special Day」は・・・・これから始まる

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